映画『#マンホール』レビュー|脱出サスペンスの顔をした“SNS時代の怖さ”が刺さる一本

サスペンス

「マンホールに落ちた男の脱出劇」と聞くと、シンプルなワンシチュエーション・スリラーを想像する人が多いと思います。
実際その要素はしっかりあります。ですが『#マンホール』はそれだけでは終わりません。

閉鎖空間でのサバイバルに、SNSでの拡散・特定・暴走が絡み、終盤に向けて見え方が大きく変わっていく作品です。

やなきち
やなきち

『FALL』『フローズン』などの緊迫したワンシチュエーション映画にサスペンス要素も加えた感じ

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作品情報

  • 作品名:#マンホール
  • 公開年:2023年
  • 主演:中島裕翔(川村俊介 役)
  • 共演:奈緒(工藤舞 役)
  • 監督:熊切和嘉
  • 原案・脚本:岡田道尚

【ネタバレなし】あらすじ

不動産会社で営業成績No.1の川村俊介は、社長令嬢との結婚式を翌日に控えていた。結婚前夜、渋谷で開かれたサプライズパーティーの帰り道、酩酊した川村はマンホールの穴に転落する。深夜、穴の底で目を覚ました川村は、足に深手を負っており、思うように身動きが取れない状態になる。

川村はスマートフォンで現在地を確認しようとするが、GPSは誤作動を起こし、警察に連絡しても十分に取り合ってもらえない。そこで、唯一つながった元恋人に助けを求める一方、SNS上で「マンホール女」のアカウントを立ち上げ、居場所の特定と救助を呼びかける。

しかし、状況を整理していく中で川村は「ここは本当に渋谷なのか」「事故ではなく、誰かにはめられたのではないか」という疑念を抱き始める。結婚式まで残された時間が少ない中、川村は脱出と真相解明を同時に進めていく。


おすすめポイント

1)ワンシチュエーションなのに展開が止まらない

マンホールの中という限られた場所が中心ですが、スマホとSNSを介して外の情報が次々に入ってくるので、画面の動きが止まりません。
「どうやって出るか」だけでなく、「なぜこんな状況になったのか」が並行して進むのが面白いです。

2)SNSの使い方が今っぽくて怖い

SNSは救助の手段になる一方で、拡散や犯人探しが過熱していく危うさも描かれます。ネット上の暴走や誤認による被害が本作の重要なポイントになっています。

3)事前情報を入れすぎない方が楽しめる

この作品は、途中から印象が変わっていくタイプ。
タイトルと「マンホールに落ちた男の話」くらいの情報で観ると、ラストの展開がかなり楽しめます。


こんな人におすすめ

  • ハラハラするサスペンスが好き
  • ワンシチュエーション・スリラーが好き
  • SNSやネット炎上の怖さを描いた作品に興味がある
  • 「ただの脱出劇では終わらない映画」を観たい人

ここからネタバレあり

未視聴の方はここでストップ推奨です。


【ネタバレあり】事件の真実

結婚式前夜、川村は同僚たちに祝われたあと、強い眠気に襲われる。目を覚ますとマンホールの底におり、足を負傷して自力で脱出できない状態になっていた。GPS表示は渋谷付近を示すが、現地の天候や警察の情報と食い違いがあり、川村は「事故ではなく、どこか別の場所へ連れてこられた可能性」に気づく。

警察対応が進まない中、川村はSNSアカウント「マンホール女」を作成し、ネットユーザーを巻き込みながら場所の特定と犯人探しを進める。情報拡散は加速し、同僚たちの人間関係や過去の女性関係まで晒され、川村の同期・加瀬は犯人扱いされて、過激アカウント「深淵のプリンス」に襲撃される。

川村はマンホール外の風景を撮るためスマホを投げて撮影し、看板や周囲の情報をSNSに流す。ネット上の“特定班”と「仮面の男」の情報提供により現在地の特定が進み、動画配信者が救助に向かう流れになるが、これは罠で失敗に終わる。

その後、川村はマンホール内で腐乱死体を発見し、過去の記憶を思い出す。そこで明かされるのは、観客が見ていた主人公が“本物の川村俊介”ではないという事実だった。主人公の正体は吉田であり、本物の川村を殺害し、顔を整形して川村になりすましていた。今回の事件は、その事実を知る人物による復讐として仕組まれていた。

吉田(偽の川村)は、復讐相手として本物の川村の交際相手・折原奈津美に心当たりを持ち、奈津美の情報をSNSに流して黒幕だと断定する。するとSNSはさらに過熱し、「深淵のプリンス」は奈津美への危害まで示唆する。いっぽうで、吉田が投稿した“電車の音”の情報から、逆に吉田自身の現在地もネット上で特定されていく。

やがてマンホールの外に車の到着音が聞こえ、川村を助けに来たように見える人物が現れる。ロープで脱出した先にいたのは舞ではなく奈津美だった。奈津美は吉田のスマホを操作してGPSを故障させ、舞の連絡先と自分の番号を入れ替えていたため、吉田は最初から奈津美と会話していたことになる。

奈津美は吉田を追い詰めるが、吉田は妻の妊娠を持ち出して同情を誘い、隙を作って奈津美を襲おうとする。そこへ「深淵のプリンス」が現れ、ボウガンを発射。吉田は再びマンホールの中へ落下し、救いのない余韻を残して物語は終わる。


感想

ここからは、完全に自分の感想です。

まず思ったのは、**「前半で感じた主人公へのモヤモヤが、後半で一気につながってスッキリした」**ってこと。
観てる最中、「この人、追い込まれてるにしても言動きついな…」って感じる場面があるんですよ。そこが終盤でちゃんと意味を持ってくるのでこれは気持ちよかったです。正直誰もこんな男を助けたくないと感じさせるほどの嫌味な言動の数々で、誰が犯人か気になるより川村って男に不信感が向く構図にはなっていましたね。

あと、この映画でいちばん刺さったのは、やっぱりSNSの描き方。
助けを求めるために使ったはずのSNSが、途中から自身を脅かす凶器みたいになるんですよね。
善意っぽく見える動きも、勢いがつくと簡単に暴走する。今の時代だと「いや、これ普通にありそう…」って思えるのが怖かったです。そこがただの脱出スリラーで終わらない理由だと思います。
拡散のスピードが現実離れしてましたけどそこはご愛嬌ですね。

ラストも、スカッとする終わり方ではないです。
でも、個人的にはこの作品には合ってると思いました。
誰か一人が勝って終わる話じゃなくて、ネットの熱狂も人間の悪意も全部あと味として残る。観終わったあとに「面白かった」で終わらず、ちょっと考えさせられるタイプの作品です。


“マンホール脱出”を入口にして、SNS時代の怖さまで描き切ったサスペンス。
『#マンホール』は、設定のインパクトだけで終わらない作品です。
ネタバレを踏まずに観るほど面白さが増すタイプなので、気になっている人はできるだけ情報を入れずに観るのがおすすめ。
「閉じ込められる系」の緊張感が好きな人、SNSの怖さを描いた作品が好きな人は、かなり楽しめる一本だと思います。

#マンホールは下記サブスクで配信中です。
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